万人が使いやすいユニバーサルデザイン、住宅・家具…カタチやさしく――導入広がる。(1998年7月11日)

■いつ?
1998年6月17日~21日
■どこで?
株式会社NECデザイン(開発),積水ハウス株式会社総合住宅研究所(開発),多摩美術大学
■誰が?
株式会社NECデザイン,積水ハウス株式会社総合住宅研究所,多摩美術大学
■何をした(する)?
・株式会社NECデザイン=情報端末「アイ・ステア」を開発。

・積水ハウス株式会社総合住宅研究所=UDを採用した住宅の研究を始めた。

・多摩美術大学=NECと共同でUD研究に着手した。

■なぜ?
UDと呼ばれる考え方が、日本で定着し始めたから。
■どのように?
・NECデザインのチーフデザイナー、三沢純子氏は情報端末「アイ・ステア」を開発した。端末を天井から吊り下げ、スライド式で上下に動くようにした。端末は画面は上下左右いずれの向きにも変えられる。画面を設置した柱は340度回転可能だ。ショッピングセンターでは、備え付けの地図を見ても店の位置を把握するのが面倒なもの。この機械を使えば、端末を向けた方向に何があるか、一目でわかる仕掛けを作ることができる。

・積水ハウスの総合住宅研究所は2年前からUDを取り入れた住宅の研究を始めた。台所の流し台の天板部分に手すりを付け、通常と扉がある足の部分には、奥行き15センチほどのくぼみ(ニースペース)を設けた。年をとるとひざが曲がるので、流し台の扉が邪魔になる。一般の人も、イスに腰掛けて台所作業したいときもあり、くぼみがあれば作業がしやすい。

・多摩美術大学は96年度からNECと共同で、ユニバーサルデザイン研究に着手し、約60人の学生が主に電気製品のデザインを学び、試作品を製作した。第1回卒業生は自動車、家電、化粧品、時計などのメーカーに就職した。

ユニバーサルデザイン・シンポ――4月8日、日経ホールで。(1998年3月12日)

■いつ?
1998年4月8日
■どこで?
日経ホール(東京・大手町)
■誰が?
株式会社日本経済新聞社,三菱デザイン・アソシエーツ
■何をした(する)?
誰もが利用できる製品と環境の提供を目指すシンポジウム「バリアフリーを超えて―ユニバーサルデザインを考える」開催。
■なぜ?
記載なし。
■どのように?
・パネル討論 鎌田実東京大学助教授、川内美彦アクセスプロジェクト代表、近藤和子E&Cプロジェクト高齢者班チーフほか、コーディネーター=古瀬敏建設省建設研究第一研究部長。

・入場無料=定員400人

複写・ファクスひと工夫、富士ゼロックス、試作――操作指示の文字拡大。(1997年11月24日)

■いつ?
1997年4月8日
■どこで?
富士ゼロックス株式会社(開発)
■誰が?
富士ゼロックス株式会社
■何をした(する)?
万人に使いやすいよう設計したコピー兼ファックス機を試作した。
■なぜ?
障害者や高齢者だけではなく健常者も含めて万人に使えるようにするため。
■どのように?
・操作盤の文字の拡大や音声案内機能があるほか、操作や紙の補充が簡単にできるように工夫されている。一部機能を組み込んだ商品を98年中に発売する予定。

・試作機の操作盤は高齢者や弱視者用に操作指示の文字を大きく表示するように設定できる。画面認識技術を採用し、裏面をコピー、ファックスしようとすると警告。健常者にとってもミスが減らせ、紙の、無駄遣いが減らせる。耳の不自由な人向けに、ファックスが届いたり詰まると、振動・表示機能のあるポケットベルで知らせてくれる。

・書類をセットする部分と紙を排出する部分、補充する部分を同じ向きにすると同時に、立ったりしゃがんだりしなくても作業ができる範囲にまとめた。車椅子の人が扱えるだけでなく、健常者も座ったまま使える。補充用の紙の束が入った包装は端の部分をつまむと簡単に破れて、片手で取り外せるようにしている。

公園、ハンディ超え楽しく――香りや音など工夫、車いすでの遊びに配慮。(1997年11月1日)

■いつ?
1991年
■どこで?
全国
■誰が?
建設省(現・国土交通省)
■何をした(する)?
「身障者を考慮した公園施設」と題する設計・施工指針をだした。
■なぜ?
記載なし。
■どのように?
・1991年に建設省(現国土交通省)が出した「身障者を考慮した公園施設」と題する設計・施工指針を受けて、1997年頃には障害を持つ子供が健常者と一緒に楽しめるよう配慮された遊具を設置するなど”優しい公園”づくりが各地で進んでいた。

・1997年5月、大阪府堺市の大泉緑地の一角にオープンした「ふれあいの庭」(約2000平方メートル)の園内の通路はすべてスロープで、花壇も地面から60~70センチの高さに配置、車椅子に座ったままで植物に触れることができ、公園の入り口には点字を使った触知案内板や音声案内装置もあり、「ハンディの有無にかかわらず、きゅう覚や触覚などで四季の草花が楽しめるような工夫を盛り込んだ」と公園を管理する大阪府南部公園事務所の正木裕子技師は語る。

・東京都の立川、昭島両市にまたがる国営昭和記念公園には1997年3月、視覚障害者達の人たちからの「ベンチであることが触ってすぐにわかる工夫がほしい」との声が設置のきっかけに、座る面にタイルで凹凸の模様を付けたベンチが8基登場した。

・1997年11月1日の日本経済新聞の記事によると、国営昭和記念公園は1994年に、障害を持つ子供も一緒に遊べる「ワンパク遊具」を設置した。埼玉県所沢市の県立所沢航空記念公園でも1998年3月までに「ワンパク遊具」を設置する予定である。

・造園コンサルタント会社のSEN環境計画室(大阪市)は「人にやさしい公園づくり――バリアフリーからユニバーサルデザインへ」という手引き書を出版している。

・建設省(現・国土交通省)は1997年当時、同指針の改定作業を進めており、UDの理念を盛り込んだ新指針を1998年にも出す考えであった。

■参考資料
「公園、ハンディ超え楽しく――香りや音など工夫、車いすでの遊びに配慮。」『日本経済新1997年11月1日,夕刊,10面

東急不、分譲マンション向け、住設機器、家庭に優しく――ケガ防止へ工夫凝らす。(1997年10月14日)

■いつ?
1997年11月
■どこで?
東京都世田谷区
■誰が?
東急不動産株式会社
■何をした(する)?
住宅設備機器にUDを採用した分譲マンション第一弾「プレステージ成城」の販売を開始する。
■なぜ?
安全や安心といった住まいに必要な基本性能を高めるため。
■どのように?
・「プレステージ成城」では、UDの住宅設備機器の導入にあたって消費者によって求める機能が異なるため、まず有料オプション仕様としたが、東急不動産株式会社は今後の需要を見極めたうえで、UDをマンションの標準装備にする考えである。

・オプションとして採用するのは、電線コードにつまづいてもコンセントが簡単に外れて怪我をしにくい「埋め込みマグネットコンセント」(部品・工事費含め1個1900円)、居室や廊下に設置する埋め込み式の夜間点灯ライト(同4000円)、熱線感知センサー付きの足元灯(同1万3800円)、手かざすと水がでるセンサー付きの自動水栓金具(10万円)、手すりの下地補強(トイレで6500円)と設置(トイレで2万5000円)など。

・1997年10月14日の日本経済新聞の記事では、UDについて「ユニバーサルデザインは90年ごろに米国で生まれた理論だといわれ、96年ごろに北欧を経て日本に入ってきた。これまでの経済的・機能的なデザイン一辺倒ではなく、家やモノ、都市計画に関してもだれにでも分かりやすく、肉体的な負担が少なく使い勝手の良さを追求している。従来の日本のバリアフリーに対して、 『いかにも老いを感じる』『無機質感がある』などと抵抗のある消費者の支持を集め始めている。」と記載があった。

■参考資料
「東急不、分譲マンション向け、住設機器、家庭に優しく――ケガ防止へ工夫凝らす。」『日本経済新聞』1997年10月14日,朝刊,15面