シルバー新市場戦略探る企業(3)「高齢者配慮」いかして――幅広い層に使いやすく。(1997年9月4日)

■いつ?
1997年9月頃
■どこで?
全国
■誰が?
積水化学工業株式会社,三菱電機株式会社,ソニー株式会社などのメーカー各社
■何をした(する)?
UDを意識した製品の開発を行っている。
■なぜ?
高齢者に対するメーカーの認識が変わりはじめたため。
■どのように?
・旭化成工業と建設省(現・国土交通省)の調査によると、65歳以上の高齢者の97%は自立歩行ができるという。これまで「高齢者向けの製品は限定された市場」とみて二の足を踏んでいた企業も、「高齢者対応で使い勝手が良くなれば、広い年代層に受け入れられる」と発想を転換した。

・1997年9月4日の日本経済新聞の記事によると、住宅業界では大手メーカーはほとんどの製品で高齢者に配慮した設計を取り入れているという。積水化学工業株式会社は、エレベーターを標準装備した3階建て鉄骨系住宅「ハイムデシオ」(3.3平方メートル当たり49万円台から)の販売に力を入れている。

・三菱電機は10月、UDを意識した全自動洗濯機「MAV―50L」(7万2000円)を発売。全自動洗濯機は大容量化が進み、洗濯槽が深くなっていて高齢者には使い勝手が悪い。新製品は身長が145センチ前後の人でも水槽に手が届くように開口部を広く、底を浅くしたほか、操作部も通常機種に比べ5センチ下げた。

・ソニーは製品の使い勝手を検証する独立部署「ヒューマンインターフェイスラボ」を置いた。94年、1年がかりで高齢者の筋力や視力、神経伝達速度などを総合的に測定、基礎データを整えた。このデータを基礎に、企画や試作品の段階で、高齢者が使いづらい部分の設計の変更を求め、改善案を提案する。同社は中高年の購入者も多い高級機種のビデオカメラなどの開発で成果を上げてきた。

■参考資料
「シルバー新市場戦略探る企業(3)「高齢者配慮」いかして――幅広い層に使いやすく。」『日本経済新聞』1997年9月4日,朝刊,13面

横浜バリアフリーシンポ特集――基調講演、日本女子大学住居学科教授小川信子氏(1997年6月8日)

■いつ?
1997年6月頃
■どこで?
神奈川県横浜市
■誰が?
小川信子氏(日本女子大学住居学科教授)
■何をした(する)?
基調講演を行い、その中でUDに関する発言があった。
■なぜ?
記載なし。
■どのように?
・1997年6月8日の日本経済新聞の記事では、UDは「だれでもが使えるデザイン」と表現されていた。

・小川信子氏は、講演で「今各国ではUDという考え方で環境づくりを進めている。障害を持った方々や高齢者のためのというのではなく、みんなのために環境をよくしていこうという考え方に立って、息長く地域施設、地域計画、地域環境の整備にみんなで協力していく必要がある」と述べた。

■参考資料
「横浜バリアフリーシンポ特集――基調講演、日本女子大学住居学科教授小川信子氏」『日本経済新聞』1997年6月8日,朝刊,32面

用語チェック――ユニバーサルデザイン(日曜版)(1997年5月11日)

■いつ?
1980年代
■どこで?
米国
■誰が?
ロン・メイス教授(ノースカロライナ州立大学)
■何をした(する)?
UDを提唱し、普及した。
■なぜ?
記載なし。
■どのように?
・1997年5月11日の日本経済新聞では、UDについて「高齢者や障害者の専用品を開発するバリアフリーの考え方から1歩進んだもので、若者や子供、妊産婦、病弱者らみんなが使いやすい製品・住みやすい環境を作り出そうという考え方。」と表現されていた。

・UDの例としては、電子レンジや電話の操作ボタンを大きくして使いやすくすることなどが挙げられる。

■参考資料
「用語チェック――ユニバーサルデザイン(日曜版)」『日本経済新聞』1997年5月11日,朝刊,25面

遅れる表示のバリアフリー――増える白内障、白と黄色で混乱(日曜版)(1997年5月11日)

■いつ?
1997年度から
■どこで?
記載なし。
■誰が?
通商産業省(現・経済産業省)
■何をした(する)?
運輸省(現・国土交通省)、警察庁、など5省庁のほか、明治生命フィナンシュアランス研究所や医療機関などの協力を得て、UDの研究を開始した。
■なぜ?
各種製品や交通システムなどについて、表示や標識も含めて、だれもが快適に利用できるデザインを探るため。
■どのように?
・三菱企業グループでは三菱商事、三菱重工業など23社のデザイナーらが「三菱デザイン・アソシエーツ」という名のグループを組織し、1993年から高齢者にやさしい色彩の研究を進めている。

・1997年5月11日の日本経済新聞の記事には「こうした(UDの)試みはごく一部。通商産業省のUD研究にしても最初の三年間はデータの収集が中心。具体的なガイドラインがまとまるのはまだ先だ。」という記載があった。

■参考資料
「遅れる表示のバリアフリー――増える白内障、白と黄色で混乱(日曜版)」『日本経済新聞』1997年5月11日,朝刊,25面

バリアフリー商品、高齢化進み需要拡大――住宅・住設機器、デザインに配慮(月曜版)(1997年3月31日)

■いつ?
1997年3月頃
■どこで?
全国
■誰が?
三井ホーム株式会社,TOTO株式会社など住宅・住宅設備業界のメーカー
■何をした(する)?
高齢者や身体障害者にも使いやすいバリアフリー商品の開発・販売を進めている。
■なぜ?
高齢化の進展による、バリアフリー商品の需要拡大や金利面で優遇措置が与えられるため。
■どのように?
・1996年秋に住宅金融公庫の融資制度の変更が実施され、一定の条件を満たしたバリアフリー化が優遇金利適用の条件の一つになった。

・三井ホームは「間仕切りや壁や通路の拡張を模様替えの感覚で、簡単なリフォームで対応できる仕組み」を取り入れた「長寿社会住宅」を発売。障害の度合いや家族構成に応じて柔軟に改装できる構造にしたことで、高齢化社会における消費者の悩みに対応しようとしている。

・TOTOは1997年3月の東京・新宿のショールーム全面改装を機に、高齢者配慮商品「レブリス」の専門コーナーを設けた。

・1997年3月当時、TOTOは寝室に近い限られたスペースに、洗面台やトイレ、バスを集めた「ニューバスルーム」を提唱していた。「ニューバスルーム」では、車椅子や介護を必要とする人でも使いやすいよう配慮した器具をそろえたのに加え、幅広の引き戸を設けてトイレ・バスを1室にすることへの抵抗感を和らげようとしている。

・メーカー各社が、だれにでも受け入れられるデザインでバリアフリー商品の浸透を図る、UD化を意識しはじめた。

■参考資料
「バリアフリー商品、高齢化進み需要拡大――住宅・住設機器、デザインに配慮(月曜版)」『日本経済新聞』1997年3月31日,朝刊,47面