ユニバーサル・デザインの原則 Version 2.0 2005年9月15日
この原則は以下のユニバーサルデザインの主宰者たちによって編集されたものである。
ベティ・ローズ・コンネル、マイク・ジョーンズ、ロン・メイス、ジム・ミューラー、アーバー・マリック、イレイン・オストロフ、ジョン・サンフォード、エド・スタインフェルド、モーリー・ストーリー、とグレッグ・バンダーハイデン(アルファベット順)。
ユニバーサルデザインとは
改善または特殊化された設計の必要なしで、最大限可能な限り、すべての人々に利用しやすい製品と環境のデザイン。
環境、製品、コミュニケーションを含む広範囲にわたるデザインの原則の導く、下記のユニバーサル・デザインの原則を、著者達、つまり建築家、工業デザイナー、環境デザイン研究家たちのワーキンググループはコラボレーション(創発)しながら構築した。
現存するデザインを評価し、設計のプロセスを導き、更により有用な製品や環境の特質についてデザイナーと消費者の双方を教育することに役立てるために、ユニバーサル・デザインのこれら7原則を適用している。
ここでのユニバーサルデザインの原則は次のような書式で表現されている。
原則の名前:原則の中に表現されている主要なコンセプトの簡潔で覚えやすい表現
原則の定義:デザインに対する原則の基本的な指示の簡潔な説明
ガイドライン:原則に従ったデザインに表現された主要な要素のリスト
(注:すべてのガイドラインがすべてのデザインに関連しているわけではない)
ユニバーサルデザインの7原則
- 7原則[1] 公平な利用
- 7原則[2] 利用における柔軟性
- 7原則[3] 単純で直感的な利用
- 7原則[4] 認知できる情報
- 7原則[5] 失敗に対する寛大さ
- 7原則[6] 少ない身体的な努力
- 7原則[7] 接近や利用のためのサイズと空間
7原則[1] 公平な利用
様々な能力の人に役立ち、有益!
上の絵はあるスーパーの出入り口の自動ドアです。
自動ドアは、全ての使い手が「自動ドアの下に行く」という同じ手段で出入りすることができます。
自動ドアを使うときは、車椅子を使用している、松葉杖を使用している、目が不自由である、といった身体に不自由がある方でも人を呼んだり、別の出入り口を使用したりすることがないので、特別扱いも、差別もされずに利用することができます。
そして、一番大事なことは、全てのユーザーに魅力的であるということです。車椅子のユーザーや高齢者、妊婦などのもともとドアを利用しにくい人だけでなく、スーパーで買った物を持ち、手がふさがっている人にも自動ドアは魅力的です。また、衛生面から見ても色々な人に魅力的であると考えられます。
このように、利用者全員が同じ手段を使うことができ、特別扱いをされず、色々なユーザーに魅力的であることが「公平な利用」です。
【その他の例】
低床バス,低床電車,コードレス掃除機
7原則[2] 利用における柔軟性
好み・能力の広い範囲に適応!
イラストの例は、フロアを移動するために、階段、エスカレーターとエレベーターという三つの手段が用意されています。
大きな荷物を持った人や、ベビーカーを押す人、車椅子を使う人なども利用することができます。また、階段を駆け上がる、エレベーターをゆっくり待つなど、自分のスピードに合う手段を選択できます。
【その他の例】
タッチパネルと押ボタンがある現金自動受払機、左右どちらの手でも使えるはさみ
7原則[3] 単純で直感的な利用
経験・知識・能力・集中のレベルに関係なく利用法が分かりやすい!
上の黒い物体は何でしょう?
何かはわからなくても、「出っ張ったところを押すのかな?」ということは分かった方も多いと思います。
これは足で踏むスイッチです。このスイッチには、不要な複雑さが無く、直感的に押せばいいことが分かります。また、言語能力がなくても押せばよいことが分かります。そして、直感的な「出っ張ったところを押すのかな?」という直感と、「押すと何かおこるだろう」という期待通りに、明かりが点燈したりするということも大事な指標です。
このように、不要な複雑さはなく、日本語も英語もしゃべれなくても、押してみたら何か起きるだろうという期待や直感と一致してくれることをが「単純で直感的な利用」です。
【その他の例】
差し込み方向を示すプリペイドカードの切りこみ、シャンプーとリンスを区別するためのシャンプーボトルの凹凸
7原則[4] 認知できる情報
状況・能力に関係なく、必要な情報を伝達!
電車に乗っている時、車掌さんのアナウンスが聞き取りづらくて次の駅がどこかわからないといった経験はありませんか?
これは、電車の扉の上に設置してある液晶パネルの画像です。駅の名前を感じ、ひらがな、英語で大きくて読みやすく表示をしています。そして、最近は発音の良い女性の声を録音したものを流しており、文字以外でも情報を伝達しています。一つの情報を様々な手段で伝達していれば、アナウンスを聞き逃しても、次の駅がどこかわかります。そして、耳が聞こえない人や目が見えない人にも情報が伝わります。
このように、音声、画像など出来る限り色々な表現で情報を伝えたり、読みやすさを最大限にして情報を伝達したりすることが「認知できる情報」です。
【その他の例】
ピクトグラム(絵文字)を用いた表示、音声と視覚情報を併用した駅の列車案内
7原則[5] 失敗に対する寛大さ
危険を最小限に!
パソコンを使っていて、うっかりデータを消してしまった時「元に戻す」という機能を使うことありませんか?失敗しても、原状回復できる機能です。
このように間違えても元に戻れるようにしたり、そもそも失敗がおきにくいように設計したりすることが「失敗を最小限に」することです。
【その他の例】
プラットホームの二重扉、 扉を開けると停止する電子レンジ、便座に腰掛けないと作動しない温水洗浄便座
7原則[6] 少ない身体的な努力
効率的で快適、そして疲れにくいように!
上の画像は、スイカやメトロカードで改札を通っているところです。このカードを使うと電車に乗るたびに「駅で切符を購入する」という繰り返しの操作を最小限にすることができます。そして、切符を買うために並ばなくてすむことは、毎回切符を購入するより効率的で快適、そして疲れにくいと考えられます。
このように繰り返しの操作を最小限にしたり、疲れにくいようにしたりすることが「少ない身体的努力」です。
【その他の例】
レバーハンドル式のドアノブ、商品を取り出しやすい自動販売機、タッチセンサーつきの照明器具
7原則[7] 接近や利用のためのサイズと空間
体格・姿勢・移動能力に関係なく利用できるように!
上の画像は最近駅や公共施設で見かけるようになった、「誰でもトイレ」です。
このトイレは、車椅子やベビーカー、オストメイトを使用している人、そのほかにもトランクなど大きい荷物を持った人など、色々な人が使用できるトイレです。このトイレのように様々な身体的特徴を持った人が近づき、操作するための広さや大きさを整えているのが、「利用しやすい大きさと空間」です。
【その他の例】
料金投入口の大きな自動販売機、ボタンの大きなリモコン・電話機